いいにおいのする放談~酒井監督・直井プロデューサー (後編)

スクリーンショット 2015-06-22 2.35.17

Kisssh-Kissssssh映画祭でも上映している『MOOSIC LAB』主宰であり、「百円の恋」や「私たちのハァハァ」など数多くの話題作を世に排出するSPOTTED PRODUCTIONS代表の直井卓俊氏と、記念すべき第一回目のKisssh-Kissssssh映画祭にて「神隠しのキャラメル」で入選を果たし、今年新作「いいにおいのする映画」を引っ提げ加太に戻ってくる酒井麻衣監督にあれこれKisssh-Kissssssh映画祭にまつわる思い出等々を語って頂きました。

今回はその後半戦!MOOSICLAB2015参加作品であり、Kisssh-Kissssssh映画祭の野外上映作品である「いいにおいのする映画」のことを中心にお話ししました。前半はこちらから!

 

いいにおいのする映画に関して

 

―酒井監督は『いいにおのする映画』を作る為に東京に出て来たんですよね?

 

酒井:前に京都の会社で働いていて。映像製作会社で。でもやっぱ映画をやりたいって悶々としていて。会社勤めだとなかなか時間が取れないじゃないですか。それで映画撮りたい、『いいにおいのする映画』の企画が決まった、じゃあこれを機に東京飛び出してこようみたいな。

 

直井:すごく責任を感じましたね(笑)でもそういう気持ちがある人と物作りしたいなっていうのはあるんですよね。今回の『いいにおいのする映画』で、酒井さんはファンタジーの人なんだけど、できるだけ今の境遇を重ねて作るっていうことをやってほしくて。現状を打破しないといけない。ファンタジーなんだけど現実の自分もヒロインに投影しているという。

酒井:そうです。自分でやりたいですって言って飛び込んで、自分で「おお…どうしよう」っていう。この映画も、魔法使いになりたい女の子が照明と出会って、「照明って魔法なんじゃないか」と考えて、一歩踏み出す物語なんです。それを、今の自分に重ねて作ってみようと思ったんです。

 

―酒井さんの中では映画はある意味、魔法なんですか?

 

酒井:そうですね。(笑)

 

―だったらファンタジー路線も納得ですね。現実に起きない何かを映画に見出しているんですね。

 

酒井:アーティストさんって魔法使いだと思っているので。例えば小説だったら限られた日本語ですごい世界観を表現して人の心を動かすじゃないですか。歌手でもそうですし。限られたメロディーの中で。画家だったら紙と鉛筆で何かを生み出すじゃないですか。で、人の心が動き出したってところが魔法にかかったって瞬間だと思うんですよ。で、それになりたいってことですよね。

ーVampilliaとは、どうやって出逢ったんですか?

 

直井:酒井監督がやりたいことが「ファンタジー」だと思ったので、イメージとしてインスト系で、平たく言うとサントラを作れて、世界観を作れて、映像喚起力があるというところでVampilliaを紹介したら酒井監督がめちゃくちゃ食いついて。「これですこれです!」みたいな。その後観たライブを見て号泣してたから。で、やってくれるかわからないから、とりあえずプロット書いてみてというところから進んだんです。そしたら今回のお話の基本異なる物を持って来て。照明技師とか、いわゆる裏方でファンタジーって面白いな、何か新しいな、って。

―MOOSICの中でも異色ですよね。ああいう世界観ってあまりなかったですよね。僕もVampilliaを聴くようになって、ライブにも行って。これは逸脱したやつが来たなと。

酒井:でも話は王道ですよ。私は会社で「もう無理!」ってなっててどうしたらいいんだってなった時に直井さんに「ライブ来る?」って言われて。そしたらあったんですよそこに。ファンタジーがあったんですよステージに。「おかえり」って言われてる気がして大号泣して。それですぐ書き上げて。見てる時に話はもう一気に思い浮かんだので。運良く一番後ろの真正面で見てたじゃないですか。真正面前に何があるかって言うと照明とPAじゃないですか。照明とPA越しのVampilliaさんじゃないですか。

 

直井:それは本当渋谷WWWだったからかもしれないね。普通照明とPAって並んでないんですよ。普通照明って上にある。たまたまあそこ並んでるんですよ。で、後ろに関係者席があって、そこに酒井監督が。

 

―そういう縁があったからこそ、そういう視点で見れたと。些細なことで変わりますもんね。映画作りとか人生って。

 

直井:ですね。今回は酒井さんがVampilliaの世界観に妄想で当書きするっていう。でも、うまく言えないけど、Vampilliaは酒井さんにすごく寄せてくれたんです。俺は意外だったんです。そこまでやってくれるんだって。いわゆる本人たちのやりたいこととイメージとは少し違うと思うんです。混沌としてるし、Vampilliaって任せとくと多分グチャグチャになるんだけど、でも酒井さんの軸が全体的にわかりやすい。王道があった上でのグチャグチャって意外に楽しいんですよ。

 

―グチャグチャだけだったら単なる前衛映画みたいになっちゃいますもんね。

 

直井:本当だったら発注してここにこういう曲が欲しいっていうのも、日本語の歌詞つきの曲をちゃんとつけてくれると思わなかった。本気になってくれてるなって。お互い良い関係で。

 

演出 に関して

 

―モノクロは監督がやりたかったんですか?

 

酒井:最初は完全なモノクロじゃないイメージだったんです。でも撮影の伊集さんと話してるうちに決断しました。この物語が、非現実的なお話なんですよ。それをカラーでストレートで表現するよりも、モノクロと4:3で「これ映画です」と開き直って、提示する方が、物語に意味がでてくると思ったのです。

 

直井:意味のあるモノクロだとは思うんですよね。単にかっこいいからとかじゃなくて。結局酒井さんのやりたいことってデカいじゃないですか。じゃあどうするかって時に、モノクロからカラーだと飛躍があると。モノクロって意外と色々描けるし。最初からカラーでそっから飛躍ってなるとCGとかになっちゃう。

 

キャスティングに関して

 

直井:キャスティングが今回良いんですよね。何と言ってもレイを演じられる主人公・金子理江、委員長役の中島春陽さんに吉村界人くん。予想以上にミッチーがすごいっていう。彼のいるシーンは全部良くて…というかお話の重要なところ大体でミッチーが出て来て牽引していくという(笑)

―界人さんも下北沢のVampilliaのライブで宣伝でステージに立って「内蔵が勃起するような映画です」って言ってて「何言ってんだこの人?」みたいな(笑)。正統派イケメンじゃないなこの人って。

 

酒井:熱い男です(笑)映画の中ではクールに決めてます。

 

―本当にキャストが濃いですね。作品的には金子さんありきで撮ったって感じなんですか?

 

酒井:いえ、最初にレイってキャラクターがいて。それを演じるのは誰がいいかって直井さんから金子さんどうかって。一応そのあとオーディションもやってそこに来てくれて…即決でした(笑)

―それは金子さんがミスiDを取ったあとのことだったんですか?

 

直井:前だったんです。ミスiDの小林さんに、僕が別のPVの企画で誰かいい子いないですかって聞いたら、まだ先行中の段階で金子さんを推してきてくれて。それでキャスティングして現場で会ったら、すごく面白い子だった。

酒井:今でも憶えてるんですけど、普通に会社行こうとして朝起きたら直井さんから「金子さんミスiDでグランプリとってる!」ってメールきてて。「えーあの子が!」って。早く(出演)撮らないとヤバいぞって(笑)夜の撮影とかも「もう金子さんキツいんじゃないか」ってなってたんですけど、本人は「やります!」って言ってくれたり。頑張ってくれました。

 

最後に一言ずつ。

 

直井:これ、説明が難しい映画なんですよね。込み入ってますいろいろ。説明しだすとあらすじだけで長文になるから。詰め込みすぎなんですよある意味。でも自主映画でそういうのが好きっていうか。誰も止めないからやりすぎぐらいがちょうどいいんじゃないっていう。MOOSIC LABというお題ありきの作品としてもかなり頑張ってくれたなあという印象があります。

酒井:ある種、王道なお話なので、どなたがみても楽しめますが、何かにつまずいてる人や迷ってる人に観てほしいです。高校生や大学生にも観てほしいです。映画を観終わった後は、幸福感に包まれる映画です。百聞は一見にしかず。この映画のにおいを、観て感じてほしいです。心に刺さる何かがあるはずです。

 

 

ライタープロフィール

Naoto Oshita
Naoto Oshita
自意識がスパークしているしがない会社員です。