いいにおいのする放談~酒井監督・直井プロデューサー (前編)

インタビュー01

 

Kisssh-Kissssssh映画祭でも上映している『MOOSIC LAB』主宰であり、「百円の恋」や「私たちのハァハァ」など数多くの話題作を世に排出するSPOTTED PRODUCTIONS代表の直井卓俊氏と、記念すべき第一回目のKisssh-Kissssssh映画祭にて「神隠しのキャラメル」で入選を果たし、今年新作「いいにおいのする映画」を引っ提げ加太に戻ってくる酒井麻衣監督にあれこれKisssh-Kissssssh映画祭にまつわる思い出等々を語って頂きました。

 

―kisssh-kissssssh映画祭のことはそもそもどこで知られたんですか?

 

酒井:多分「登竜門」っていうホームページです。それにkisssh-kissssssh映画祭が載ってて。これなんて読むんだろうって思いながら(笑)。それで応募して…です。第一回だったので上映してくれるかなって淡い気持ちを込めて応募しました。

 

―それってゆうばり(映画祭)の前のことですか?

 

酒井:前です前です!初ですよ確か!

 

―そうなんですね!あ、やっぱ。僕らがフックアップしたみたいな(笑)。ありがとうございます!いやいや恐縮です…。当時、『神隠しのキャラメル』と『棒つきキャンディー』どっちも良いぞみたいな感じでしたね。どっち上げようみたいな。

 

酒井:どっちもやって欲しかった(笑)」

 

―コンペが当時80作品ぐらい来てて結構疲れ果てた中で(『神隠しのキャラメル』を)観たので、悪夢感が結構増しましたね(笑)。夢なんじゃないかみたいな。結構肝冷やした記憶がありますね。不気味すぎて。

 

神隠しのキャラメル

写真:神隠しのキャラメル

 

酒井:『神隠しのキャラメル』結構怖いですもんね(笑)

 

直井:永瀬 正敏さん演じてる役なんて一瞬で、ね。言えないけど(笑)

 

―どういう経緯で永瀬さんが出演されたんですか?

 

酒井:林海象監督が京都造形芸術大学の先生で『弥勒』って映画を撮ったんですけど。その助監督だったのでそこで仲良くなって。他の同学年の子たちは永瀬さんがどんなにすごい方なのか知ってたので、「えっ喋りかけられない…」「おはようございます」って感じだったんですけど、私が普通に「あざーっすおはようございまーす」みたいな感じでやってたら、永瀬さん的には嬉しかったみたいで。「麻衣ちゃんの将来の夢は何?」って聞かれて「監督になりたいです」って答えたら「じゃあ何か出るよ」って言ってくださって。「え!?じゃあお願いします!」って出演に持ってって(笑)。

 

直井:リップサービスかもしれなかったけどそこに本気で行くっていう。あの映画は、学生映画としてはおろかインディーズではかなりハードルが高いことをやろうとしましたよね。

 

―ファンタジーとか鬼門じゃないですか。インディーズ映画で。青春系をやっとけば何か等身大で良いものが作れるみたいな。いじめ系とか多い。またかいみたいな(笑)

 

直井:確かに、青春期が暗黒でコンプレックスがあった人が表現者になるケースが多い気がしますよね。

 

―それもあって『神隠しのキャラメル』にしたっていうのはありますね。普通学生がインディーズじゃできないだろうっていうことをやられてたので。こんな気概を持ってる人をフックアップしないわけにはいかないだろうということで。

 

酒井:嬉しいですねー。てっきりギリギリで合格したのかと…。

 

―いやいや結構ぶっちぎりな感じでした。安牌枠みたいな感じで「これ入れとこう!」って。

 

酒井:でも全然賞は何も引っかからなかったですけど(笑)

 

直井:僕はそういうところで賞を取る監督と取れない監督、それぞれどっちからの成功も見てるからね、気にする事ないですよ。とはいえ気にするだろうけど(笑)

 

酒井:私kisssh-kissssssh映画祭印象に残ってるんですよ。

 

―カフェ・ド・マルシェでやりましたよね。昔カフェだったんですけどそこを利用して。

あの雰囲気がまた『神隠しのキャラメル』に合ってたというか。

 

酒井:合ってました合ってました!

 

直井:俺らあれの上に泊まったよね。お風呂が出なくて近くの銭湯行ったりして、むしろ結構楽しかった記憶が(笑)

 

酒井:1回目は直井さんと全然会ってないんですよ。面識もなかったので、私はただ単に「私今回入選したはずなのにMOOSIC LABの方がフィーチャーされてて何なんだMOOSIC LABみたいな(笑)」

 

―僕ら結構優遇してるので。すみません(笑)。こんなにムーラボを大々的にやってるのは、元は東京でムーラボっていうのやってるって聞いて関西で全然やらないので鬱憤が溜まっていて。じゃあ和歌山でやっちゃおうっていうのが始まりで。

 

直井:京都ではあったんだけどね。「(和歌山で)やってくれるの!?」みたいな。

 

―(kisssh-kissssssh映画祭でムーラボ作品を上映する)話を最初にしたときどう思われましたか?

 

直井:MOOSICLABってそういうのも全然やるつもりでいたから。和歌山なんて絶対やったことないし、やってくれるなんてありがたいなって思いましたよ。

酒井:野外上映が素敵だなと思ってたんですよ。その日は確か『おとぎ話みたい』がやってたんです。そのときは終電で帰らなきゃならなかったので観られなかったんですけど。それで夕方頃になるとスクリーンも張ってあるじゃないですか。主演の松本さんと「いいな~」とか言ってて、悔しい気持ちで帰ってたので。そしたらそういうお話頂けたので!

 

―いやもう凱旋ですよね本当に

 

酒井:ただいまって言いたいですよね。Kisssh-kissssssh映画祭ってウェルカムな感じがすごくあるんですよ。ただの大学生だった私に対しても。あと、映画を大切にしてやってくださってる感じがして。

―本当に権威持ってる人いないですから(笑) 大概地方の映画祭って市役所の偉い人とかが絡んでるんですよ。僕ら、しがないカフェのマスターとweb作ってる人とボンクラ大学生が映画で面白いことやろうよみたいな。

 

直井:よくやれてるよね。スポンサーとかついてるの?

 

―国からちょっとお金を…。

 

酒井:街おこしになってますもんね。1回目で結構お客さん来てたじゃないですか。漁港も賑わって。

 

―あの規模よく一回目やろうと思いましたよね。5会場ぐらいあるんですよ。初回であれだけやるとこないですよ。馬鹿じゃねーの、できるわけねーだろみたいな。

 

酒井:だから良かったんです。本気度が伝わってきたのですごく良かったです。あと、スタッフさんが皆観てくれたんだなっていうのがわかって、行く人行く人に「『棒付きキャンディー』観ました!良かったです!」って言ってくださる方とか、「大学で上映してもいいですか?」って声かけてくださる方もいて。なので、ちゃんと両方見てくださったって嬉しさがありました。

酒井:『金の鍵』ってご覧になられました?夢の中のシーンがあるんですけど、それを和歌山の友ヶ島で撮ったんですよ。

 

金の鍵 (1)

写真:金の鍵

 

―言ってくださいよ!宿とか用意しましたよ!

 

酒井:(笑) 行ったら船がKisssh-kissssssh映画祭をやっていたところから出てて、「あれ見たことある」ってなって。その友ヶ島で一泊したりしてすごく楽しくて。卒業制作兼旅行で。

 

―『金の鍵』は撮影が大変だったそうですね。

 

酒井:大変でした!いろいろあって撮影が難航して、クランクアップを伸ばしたんですよ。そしたらその伸ばした期間に台風が来たっていう…。それでせっかくなので気分転換でkisssh-kissssssh映画祭にお邪魔したんです(笑)

 

ーそうだったんですか!気分転換になったんですか?(笑)
酒井:はい!(笑)もう一個忘れられない思い出があるんですよ。『神隠しのキャラメル』上映後にお話したいっていうスタッフさんがいらっしゃったので、事務局みたいなところに行ったんですよ。その前が駄菓子屋さんじゃないですか。その前で子供たちがシャボン玉やってたんですよ。その光景だけで私と松本くんは「良いなあ」ってなってたんですけど。で、事務局の場所がわからなくて、子供たちに聞いたら、女の子がシャボン玉吹いて、小道に入っていったんですよ。そしたら「シャボン玉についていったら着くよ。」って言うんですよ。「わーお!」って思って(笑)。そのセリフ頂きますみたいな。すごくグッときちゃって。

 

 

 

 

後半に続く!

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ライタープロフィール

Naoto Oshita
Naoto Oshita
自意識がスパークしているしがない会社員です。